中学2年の頃、自分を含めクラスのモテない男子どもはサカエ印刷のカンキを羨望と嫉妬のまなざしで見ていたものだ。というのも、モテモテだったカンキは、オクテで内気な男子を尻目に、いつだって女子たちに囲まれてキャハキャハ楽しそうにしていたし、中二の分際で特定の女子と鍵付きの日記帳で交換日記なんぞしていたり、サッカー部の練習さぼってヤングランドでデートしたりなどと不届き千万、しかしなんとも羨ましいモテモテ学校生活をエンジョイしてやがったのだ。カンキだけが。ちっ。いま思い出してもなんだか悔しい。悔しいけれど、カンキ以外の男子も実はみんなオレもモテたいなぁなんて思っていたわけで、少しでもモテるためになんとか情報収集っていうか女子の動向をリサーチしようと、女子に一番近い男子であるカンキから女子に関する情報データを得ていたのだった。で、カンキによる情報というのが、「いま女子の間では『ベイシティーローラーズ』という英国のバンドが流行っている」みたいな一般的な女子の趣味の傾向から「○○さんはNSPの『がんばれやせがえる』という曲が大好きである」とか、「△△さんは所ジョージのオールナイトニッポンを毎週かかさず聴いているらしい」などといった個人の嗜好であったりし、僕たちはそんな情報を知らされる度に「おーさすが!」とか「ほっほーそーだったのか」などとどよめいたり、メモしたりして、そんなカンキをちょっとリスペクトしちゃったりしていたのであった。しかし、リサーチの効果はなんもなかったけどね。
『モテるちょい不良L.(リビング)D.(デートで)K.(強印象)の作り方、いま最強のモテワザは「お家デート」/スーツもデニムも(身長も)格上げ必至!艶ブーツでモテるオヤジの晴れ舞台!/やっぱり刺激がほしいんです!罪つくりなワケありジュエリー/別冊第1付録 「秋冬エレガンス」のモテるテクニック/別冊第2付録 「モテる!」への道は一日にしてならず! (レオン12月号)』とちょい不良がなんなのかはよくわからないけど、相変わらず笑わせてくれる内容みたいなのでやっぱりこの雑誌はなんだかありがたい。
いったいどういうオヤジが「モテるちょい不良(わる)オヤジ」を目指すのだろう。自分が「モテない」と思っているから「モテたい」のかな。
でも考えてみると「モテたい」という願望があるからこそ「モテない」という自覚に達するわけで、最初から「モテたい」なんて思わなければ「オレはモテない」なんてってションボリすることも無くなるんじゃないかな。
写真、左手に携帯を持ちピコピコやりながら、右手で左足のズボンの裾から手を入れて乾燥肌で痒いのか脛のあたりをボリボリ掻いている「ちょい不良(ワル)」のカンキの姿を見て、女性たちはきゅんとしちゃうのだろうな。『別冊第1付録 「秋冬エレガンス」のモテるテクニック』や『別冊第2付録 「モテる!」への道は一日にしてならず! 』にはこんなテクニックも掲載されているのだろうか。「このごろ英語のラブメールがたくさん届いて困ってんだよ。なんかへんな添付ファイルと一緒にさ」などと言っていて、それはきっとスパムメールじゃないかと一瞬思ったのだが、カンキのことだから、やはりそれはラブメールなんだろうな。
カンキは七味ちゃんにもモテている。なんでだ!